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THE SEMANTIC LAYER

会社の言葉を、AIが理解できる形にする。

文字を読めることと、意味が分かることは違います。AIが賢くなっても、その会社で「粗利」がどこまでを指すのか、誰がいくらまで決めてよいのかは、外からは分かりません。私たちはその会社固有の言葉と決まりを先に定義し、その上ではじめてAIに仕事を渡します。この層を、オントロジー(意味の層)と呼んでいます。ハーネスの五つの要素は、どれもここを見て動きます。

自動倉庫の高層ラックの写真に、三層のアイソメ図が重なっている。下からPHYSICAL(生データ)、SEMANTIC(意味の層)、EXECUTION(実行)。実行の層には人の承認が接続されている
商品登録の作業机。たたんだニットと出荷用の箱、サイズ表の紙とメジャーが並び、モニタに登録フォームが開かれている。手前に業務の実体と関係の図が重なり、顧客が注文を置き、注文は商品を含み、商品はチャネルに掲載され、注文は請求として計上される

WHAT WE WRITE DOWN

意味の層に、何を書くか。

実体を書く。

商品、注文、顧客、出し先、請求。会社が日々扱うものを、ひとつずつ名前をつけて並べます。名前も意味も、その会社で実際に使われているとおりに定義し、その定義をAIに覚えさせます。世間一般の意味で動かれると、返ってくる答えはその会社のものになりません。

関係を書く。

このアパレル商品には、どの色とサイズがあり、どの出し先に載っていて、どの広告のカタログに入っているのか。この案件には、どの見積と、どの請求と、どの担当者が紐づいているのか。ものとものの間に、そういうつながりを一本ずつ引いて、種類まで決めます。つながりが曖昧なままだと、AIは平気で無関係な数字を並べます。

判断のルールを書く。

粗利の定義、値引きの上限、この型番がどの機種に合うのか。人が頭の中で使っている基準を、そのまま読める形で書き出します。プログラムの中に埋め込んでしまうと、変えるたびに開発が必要になるからです。

できる操作を書く。

何をしてよいか、どの条件を満たしたときに実行できるか。操作を先に定義しておくことで、定義していないことは起こらない状態を作ります。

夜の検品ラインの写真に、検算の流れの図が重なっている。取得→検算→承認→実行→記録と進み、検算で合わなければ停止し推測で埋めない。承認には人が介在し、記録から再照合へ戻る

HOW WE CHECK

合っているかを、どう確かめるか。

機械が機械を検算する。

AIを入れると、たいてい確認の仕事が増えます。出てきた数字を人が見直すからです。確かめる側も機械にしました。媒体の管理画面の数字と、自社に取り込んだ集計を突き合わせ、合わなければレポートを出しません。

合わなければ、止める。

条件が揃わないとき、それらしい数字で埋めることはしません。止まった事実と、止まった箇所を残します。

何度やっても同じ結果になる。

同じ期間を再取得すれば、同じ数字が出ます。実行のたびに値が動く集計は、根拠として使えません。

どこから来た数字かを残す。

出所と取得日を数字に紐づけて保存します。後から「この数字は何を見たのか」を人が辿れる状態にします。

WHO OPERATES IT

誰が動かすか。

実行の前に、人が承認する。

確認されていない仕事は、実行待ちにすら入りません。止めたい人が必ず止められる状態を、仕組みの側で担保します。

AIエージェントが分担する。

調査、資料、集計、照合、進行。役割の違うAIエージェントが担当を持ち、それぞれの持ち場の中だけで動きます。

仕事を型として保存する。

一度やった仕事は手順として残し、次から同じ品質で回せるようにします。担当者が抜けても、やり方が会社に残ります。

変更の記録が残る。

誰が、いつ、何を変えたのか。定義そのものの変更履歴も残すため、後から議論をやり直せます。

THE SCREEN

言葉が、一覧になっている。

定義した言葉は、頭の中や議事録ではなく、一覧として置かれます。ひとつずつに、定義・出所・状態・他の言葉との関係の本数が付きます。「誰がそう決めたのか」を後から辿れる状態にしておくことが、AIに仕事を任せる前提になります。

SEMANTIC WORKSPACE15

横にスクロール →

Semantic Workspaceの一覧画面。粗利・CPA・ブロック率・在庫不一致などの言葉が並び、それぞれに定義、型付き関係の本数、管理元(経理規程や運用ルールなどの出所)、状態が表示されている

実際の画面です。表示しているデータはサンプルで、「粗利」「CPA」「在庫不一致」のような、会社ごとに揺れる言葉から先に決めます。 画面をタップすると、そのまま開けます。

THE HARNESS

AIは賢い。ただ、それだけでは業務は回らない。

ここで言うモデルとは、ChatGPTやClaudeのような、考える部分そのものです。ひとつのモデルに全部をやらせる作り方は、続きません。定型の手順はプログラムで固定し、判断のいるところだけをモデルに渡す。分類は速いモデル、迷う判断は慎重なモデル。呼び出せる道具を用意し、途中の状態を残し、取り消せない操作は人に戻す。この一式をハーネスと呼びます。私たちが作っているのは、モデルそのものではなくこちらです。

  1. 01

    TOOLS

    道具

    モデルは考えられますが、自分では何もできません。集計する、書き出す、送る、確かめる。呼び出せる道具を一つずつ作ります。

  2. 02

    INTEGRATIONS

    接続

    業務システムには、そもそもAPIが用意されていないものが少なくありません。その場合は、人が使う画面をそのまま操作する形で繋ぎます。

  3. 03

    FILE SYSTEMS

    作業場

    何日もまたぐ仕事は、途中の状態を残せないと最初からやり直しになります。作りかけの成果物と、途中の判断を置いておく場所を持たせます。

  4. 04

    ORCHESTRATION

    段取り

    全部を同じAIにやらせません。分類は速いモデル、判断は慎重なモデル、書き出しは決まった手順。どれを並行して進め、どれを確認の後に回すかを決めます。

  5. 05

    OVERSIGHT

    監督

    確信の低い仕事は確認待ちへ。取り消せない操作は人の承認へ。何をなぜやったかは記録に残す。私たちはこの関門を MAP(Meaning Admission Protocol)と呼び、通ってよい知識だけを実行へ渡します。

この五つが共通して見ているのが、会社ごとの言葉と決まりです。そこが決まっていないと、道具も接続も段取りも、正しいものを選べません。

WHAT WILL LAST

モデルが良くなると、この一式は要らなくなるのか。

一部は要らなくなります。計算を外の道具に任せている部分や、どのモデルに振り分けるかの段取りは、モデル自身が賢くなるほど薄くなっていきます。そうなったら、その分は削ります。

変わらないものもあります。取引先の業務システムにAPIが無いことは、モデルが賢くなっても解決しません。誰がいつ何を承認したのかを記録に残す必要も、なくなりません。会社ごとに言葉の意味が違うことも、そのままです。私たちが厚く作っているのは、そちらです。

WHERE IT SITS

空いているのは、通過を決める層です。

AIをどう繋ぐか、どう調べさせるか、どう分担させるかは、この2年で標準が揃いました。決まっていないのは、引いてきた知識をこの仕事に使ってよいかどうかの判定です。私たちはそこを、先に触れたMAPとして定めています。

何を決めるか標準
接続AIが、どの道具に手を伸ばしてよいかMCP
検索どの資料を、引っぱってくるかRAG
連携複数のAIが、どう分担するかA2A
通過その知識を、いまこの仕事に使ってよいかMAP

標準を置き換えるものではありません。MCPで繋ぎ、RAGで引き、その上に一枚だけ関門を足しています。

THE METHOD

通らないものは、動かない。

AIに渡す知識には、通過条件を課しています。ひとつでも欠けているものは実行に渡りません。私たちはこの関門を MAP(Meaning Admission Protocol)と呼んでいます。意味を、実行に入れてよいかどうか審査する、という意味です。

  1. 人が確認していること

    誰がいつ確認したかが、その知識に記録されている。

  2. 出所が分かること

    どの文書・どの取り決めから来た定義かが残っている。

  3. 期限内であること

    有効期間を過ぎたもの、再確認の期限が来たものは通さない。

  4. その案件の範囲であること

    参照できる知識を、案件ごとに閉じている。

とくに効くのは、三つ目の期限です。定義には再確認の期限を付けています。期限が過ぎたものは、正しそうに見えても通しません。危ないのは間違った定義よりも、古いまま使われ続ける定義だからです。

通らなかったとき

  • 止まる

    実行に渡りません。代わりの値を推測で埋めることもしません。

  • どこで落ちたかが残る

    四条件のどれで落ちたのかが記録されます。「なんとなく動かない」を作りません。

  • 人に回る

    落ちたものは人の確認待ちに入ります。人が直せば、そこから先へ進みます。

無数の点と線が絡み合う情報の集合体。左は密に混み合い、右は疎で整然としている。境界の手前には通過できずに留まっている中空の点がある。手前にMAP(Meaning Admission Protocol)の計器パネルが重なり、4条件のうち再確認の期限だけが不適合で、4件中3件が実行へ進み1件が保留されている
  • 01

    構造と型と記録を、分けて持つ。

    会社に何があるか(構造)、その仕事をどの順序と条件で行うか(型)、今回実際に何が起きたか(記録)。この三つを混ぜずに持ちます。混ぜると「やったつもり」が記録に残ります。

  • 02

    通してよい知識だけを、実行に渡す。

    上の四条件を満たした知識だけが、実行へ渡ります。満たさないものは通しません。この関門がMAPです。

  • 03

    一周したあと、もう一度突き合わせる。

    取得し、突き合わせ、人が承認し、実行し、記録し、最後にもう一度突き合わせます。合わなければ、その場で止めます。推測では埋めません。

BUILT BACKWARDS

現場の判断から、逆に作る。

データを集めてから使い道を考える順番では、たいてい使われないまま終わります。私たちは逆から作ります。まず現場でいちばん重い判断を選び、その判断に必要な言葉だけを定義し、必要な範囲のデータだけを繋ぎます。全社のデータ整備を先に終わらせる必要はありません。

WHAT STAYS HUMAN

人が決め続けること。

AIに渡せる仕事が増えるほど、人の時間は決めることのほうへ寄っていきます。手を動かす時間が減り、決める時間が残ります。

  • 予算をいくらにするか、どの案を出すか。提案はAIが作り、承認されたものは機械が適用しますが、通すかどうかは人が決めます
  • その会社の言葉を、何と決めるか。私たちは案を出しますが、決めるのは会社です
  • 相手のいる交渉と、その場での意思決定

CONTACT

会社で起きている業務を、AIが理解できる形にする。

まず1領域だけ、終わる状態を作ります。全社のデータ整備を先に終わらせる必要はありません。